飲食産業新聞

地域密着やマイノリティなどで人気

一杯一杯のハンドドリップの珈琲だ

2014.07.07

 「サードウェーブコーヒー」とは、アメリカのコーヒー文化「第3次」ムーブメントのこと。過去には第1の波、第2の波があった。第1の波のファーストウェーブは、第二次世界大戦後~1970年代ごろまでのアメリカのコーヒー文化のことだ。
 この時代は真空パックが開発され、焙煎コーヒーの遠距離流通が可能となり、マーケットを大きくした要因となった。要するに大量生産•大量消費の時代で、品質は後回しの「アメリカンコーヒー」全盛の時代で、また米国の外食産業も著しく成長した時代でもあった。

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 こういう時代に反発して生まれて来たのが第2の波の「セカンドウェーブコーヒー」。そんなに「美味しくないコーヒー」に嫌気がさし、1980年代頃から「質の良いコーヒー」を広めようと生まれて来たのがシアトル系のコーヒーである。
それまでのコーヒーとは違う高品質の豆やエスプレッソマシーンなどを使い始め、シアトルから誕生した「スターバックス」が代表的だ。エスプレッソを主流としながら様々なアレンジコーヒーが楽しめて、紙コップでテイクアウトできるアメリカ流のコーヒー文化を広めた。
 日本でも1996年に銀座1号店が出店。ソファが置かれた暖かみのある内装デザインや、当時としては珍しい「全席禁煙」など、その後の日本のコーヒー文化に多大な影響を及ぼした。スターバックスは全世界にチェーン展開をしている。

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 しかし、2000年以降そのマニュアル化された大手コーヒーチェーンの「アンチ」として登場してきたのが、アメリカのオークランドなどを中心に人気となっていた第3の波の「サードウェーブコーヒー」。今年の10月に日本支社をおいてオープンする「ブルーボトル•コーヒー」がそれだ。巷では米コーヒー界のアップルと賞賛されている。
 ハンドドリップで一杯ずつを丁寧に淹れていくスタイルで、マイノリティと地域密着型の店作りが特徴的でその付加価値によって人気が高まっている。よりコーヒーの味を楽しみたいと思う人たちの憩いの場になっているようだ。
 もう一つの特徴はフェアトレードを意識し、実行していることだ。フェアトレード(公平貿易)とは、発展途上国で作られた作物や製品(コーヒー、バナナ、カカオ、紅茶等)を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みである。
 またお客様の前で一杯一杯をハンドドリップするということは、「シングルオリジンコーヒー」にもつながっている。「シングルオリジンコーヒー」とは、コーヒー豆の生産国、生産地域、生産処理方法が明確で、かつそれらが一切ブレンドされていないものをいう。
 さてここで、「ブルーボトル•コーヒー」について触れよう。創業者はジェームズ•フリーマン氏。2002年にオークランドのファーマーズマーケットで自家焙煎コーヒーの販売を開始した。現在、米国で12店舗展開。来年はロスに3〜4店、サンフランシスコに2〜3店、ニューヨークに2店を新規オープンする予定という。
 全てのコーヒーを丁寧に一杯一杯抽出し、フードも店内のキッチンで作られる。コーヒー豆も獲れる時期に合わせて、コスタリカ、ウガンダ、エチオピア、ブラジルなで様々な国に買い出しに行く。仕入れの70%が認定オーガニックコーヒー豆。米国の他のカフェより、多くの認定オーガニックコーヒー豆を使っているようだ。加えて小さな農家(認定オーガニックを取得する予算のない農家)の良質な豆も直接買っているという。
 日本に出店する店舗は、東京メトロ清澄白河駅近く(清澄庭園近く)で決してお洒落で派手ではない。店舗は24坪の広さ。このスペースの他にコーヒー豆の焙煎を効率よく質をコントロールしやすい「ローリングスマートロースト」という焙煎機も導入する。従って東京もオークランドと同じコーヒーが愉しめる。
 フリーマン氏は随分前から喫茶店でマスターの淹れたコーヒーをゆっくり味わう文化が日本にあったことも承知している。また、手軽で短時間がウリのコンビニコーヒーのことも知っているだろう。今回の「サードウェーブコーヒー」の流れは、日本にどんな影響を及ぼすのだろうか。

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 最近の県内の新しい繁盛している店舗も小売、外食店に限らず、自然を愛する誇り高い農業生産者の理念や生産地域のこだわり、あるいは職人の技と情熱を訴えるところが増えて来ている。