発酵食品は健康維持や旨み
深い味わいに欠かせない!
イタリアのコラトゥーラも…
2015.10.23
「発酵の里 こうざき」(千葉県香取郡神崎町)。千葉県で一番小さなまちで、発酵文化の息づくまちといわれている。この地は北総の穀倉地帯として農産物に恵まれ、地下水も豊富であったため、酒や醤油などの醸造業が発展。江戸時代から続く二軒(寺田屋本店など)の酒蔵が魅力ある「日本酒」を生み出している。
発酵食品というと何か特別なモノのように思えるが、私たちのごく身近な食品であり、納豆、チーズ、味噌、醤油、魚醤やキムチもそうである。この他にもくだんの日本酒、焼酎、ビール、ワイン、みりん、パン、ヨーグルト、鰹節、ぬか漬け、たくあんなどが思い当たる。
昔から健康維持に良いといわれ、ほとんどの方が食されている。どの発酵食品も造られる過程で利用される微生物がカビなのか、細菌なのか、酵母菌なのかの違いだけである。このことが以外に知られていない。
一般的に腐った食べ物は、食中毒や下痢を起こす原因になり食べることは出来ないが、発酵させた食品はまろやかで、特有の美味しさを創り出すことが出来る。例えば「みりん」は焼酎に餅米と米麹を入れて発酵させて「味醂」を造る。ヨーグルトは乳酸菌、パンは酵母菌、味噌や醤油は麹菌、乳酸菌、酵母菌、納豆は納豆菌といった具合だ。
最近は健康管理のために意識して発酵食品を食べるようにしている。勿論、旨みやコクや深い味を求めて魚醤などもマイクッキングの隠し味にしている。今年の春先には友人からイタリアの調味料「コラトゥーラ」も頂いたので、スパゲッティなどのパスタ料理にも使い始めた。
少し紹介させて頂くと、イタリア南部で育まれた「コラトゥーラ」は、イタリアの“うま味”エッセンスといわれる調味料である。パスタをはじめ様々な料理に使われ、今ではイタリア全土の人々に愛されている伝統的な調味料。アンチョビのろ過液で美しい琥珀色の液体には海の“うま味”が詰まっていて、数滴加えるだけで深い味わいを引き出してくれる。
日本ではまだ馴染みの薄いこの調味料のルーツは、古代ローマ時代にまで遡る。カタクチイワシの内臓から作られた魚醤を「ガルム」と呼び、万能の調味料として使われていたという記述が美食家アピーキウスの著書から見つかっている。ローマ帝国が滅びるとガルムは一旦世の中から消え、調味料の主流は一時期ソースに移ったが、アピーキウスのこの記述の発見を機にガルムを再現しようとする動きが高まり、その過程で「コラトゥーラ」は生まれたといわれている。
「コラトゥーラ」は地中海でとれたカタクチイワシのみを使って出来たいわゆる魚醤。ただ日本の魚醤と違っているのは、美しい琥珀色の液体であるということだ。塩漬けしたカタクチイワシを熟成させ、圧搾、ろ過してつくられる天然発酵食品で、同じカタクチイワシを原料とする日本の「いりこ」や「しょっつる」と大きな違いはないように思う。
醤油や味噌など発酵食品に日頃から慣れ親しむ私たち日本人にとって、コラトゥーラは何処か懐かしさを感じさせてくれる味わいである。「コラトゥーラ」は塩分がまろやかでコクがあるので、塩とオイルの代用品となって、パスタをはじめとするイタリアンはもちろんサラダやブイヤベース、或いは、中華風海鮮炒めやシンプルに卵かけご飯のお醤油の代わりにもなる。正に万能型天然調味料といっても過言ではない。
最近どこのトラットリア、 ピッツェリアなどのアンティパスタ店では何か物足りなさを感じており、もう少しコクや深い味わいが欲しいと思っていた。せめてリストランテ(コースの食事提供)に近いお店では、この「コラトゥーラ」を使っているのかと尋ねて見ると、意外や意外使ってないようだ。「アンチョビは使っていますが…」というお返事は返ってくる。洋食食材等を扱っている地元の業者さんにも訪ねてみたが、「値段も高く、売れないので扱っていない」という。
県内のお店の食べ歩きの少ないせいもあるかも知れないが、イタリア旅行した時のフルコースの「第二の皿」のあの味が忘れられない。地方の外食店離れがどんどん起きている。今の飲食店の経営姿勢では仕方ないないだろう。しかし、業種業態問わず「王道を行くというか、基本に忠実な料理づくりをもっとして欲しい」と思う。勿論、食材の吟味も含めてだ。各地方や地域に宝となる素晴らしい食材が散在している。