2017.12.10(月)

海外旅行人数は過去最高の73.4万人 

旅行への意欲は高く総旅行人数も

過去最高に(JTB)

   JTBは年末年始に出発日基準で12月23日(祝)~1月3日(木)に1泊以上の旅行に出かける人の旅行動向の見通しをまとめた。この調査は旅行動向アンケート、経済動向、業界動向や航空会社の予約状況、JTBグループの販売状況などから推計したもので、1969年に調査を開始して以来、今年で50回目となる。調査結果は以下の通りだ。

(表1)2018年/2019年年末年始旅行動向推計数値

*旅行人数は延べ人数。平均費用は一人1回あたりの費用
*国内旅行人数は宿泊を伴う旅行者の人数(観光および帰省目的の旅行に限る)
*海外旅行人数は出国者数(業務目的の旅行を含む)
*国内旅行平均費用は交通費・宿泊費•土産代•食費等の旅行中の諸費用を含む
*海外旅行平均費用は燃油サーチャージ、旅行先での交通費•宿泊費•食費を含む
*対前年比は小数点第二位以下を四捨五入
 
<社会経済環境と旅行をとりまく環境>
1.社会経済環境
   年末年始の旅行に影響する今冬のボーナスは前年比3.5%増加し、2年ぶりに前年を上回り、過去最高が見込まれている(11月16日、日本経済団体連合会発表)。また上場企業の9月中間決算は、過去最高を更新する企業が相次いだ。しかしながら、米中貿易摩擦への懸念などから、2019年3月期の業績については慎重な見通しが目立っている。
   豪雨や地震の影響で7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0.3%減少し、2四半期ぶりにマイナスとなったが、11月の内閣府「景気ウォッチャー調査」によれば、10月の現状判断DI(注1)は、前月差0.9ポイント上昇の49.5で景気ウォッチャーによる見方は「緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、コストの上昇、通商問題の動向等に対する懸念もある一方、年末商戦等への期待がみられる」となっている。ここ1か月の株価は概ね22,000円前後で推移し、為替レートは対ドル、対ユーロについては年初以来小幅に変動している(図1、2)。
(注1)タクシー運転手小売店の店長など景気に敏感な人への調査結果を指数(DI)化したもの
(図1)日経平均株価の推移(2018年11月1日~30日)

(図2)為替レート(対ドル、対ユーロ(の推移(2018年1月~11月)2.今年

2.今年の年末年始の旅行を取り巻く環境と生活者の旅行意向
   今年の年末年始の休暇は暦通りならば、12月29日(土)から1月3日(木)の6日間だが、1月4日(金)を休めば9連休が可能だ。メーカーなどでは1月4日(金)を休みにする企業もあり、例年より長い休暇が旅行喚起につながりそうだ。さらに今年は12月22日(土)~12月24日(振)のクリスマス3連休もあり、この時期に旅行をする人も増えると考えられる。
   JTBが毎年実施している年末年始の旅行に関するアンケートで「昨年と今年の年末年始の違い」を聞いたところ、「昨年より長く休みがとれそうだ」は、10.4%(昨年差+6.2ポイント)と前年より増加し、「昨年より休みが取れそうにない」は、2.2%(同▲2.0ポイント)であった。
   収入に関しては「昨年より収入が増えた」は13.7%(同+1.7ポイント)で、「昨年より収入が減った」は8.7%(同+0.3ポイント)であった。一方「昨年よりお金をかけずに質素に過ごす予定」は5.5%(同▲1.1ポイント)で、「昨年よりお金をかけて豪華に過ごす予定」は、4.9%(同▲5.3ポイント)で、「豪華に過ごす」は大きく減少している(表2)。
   今後一年間の旅行支出に対する意向を聞いたところ、「支出を増やしたい(15.1%)」は、前年より1.9ポイント増加し、「支出を減らしたい(24.1%)」は3.8ポイント減少した。「同程度(55.6%)」(「単価を減らし回数を増やす(8.8%)」「単価を増やし回数を減らす(5.4%)」「単価も回数も同程度(41.4%)」の合算)は前年より1.7ポイント増加している(表3)。
   今年の年末年始の旅行については、足元の景気は改善され、為替や株価も比較的安定し、日並びもよく、旅行に行きやすい環境と考えられる。またアンケートからも収入は増え、支出に対する意向も前向きとであると見られる。
(表2)昨年と今年の年末年始の違い(複数回答)(表3)今後
 

(表3)今後1年間の旅行の支出に対する意向(調査月ベース)(   )は前回との差 ※アンケート結果

※アンケート結果は無回答があるため単一回答でも合計100%にはならない。
 
<2018年~2019年年末年始旅行動向予測>
1.海外旅行人数は73.4万人(前年比+4.3%)、海外旅行平均費用は214,000円(前年比+3.9%)
      出発日のピークは12月29日(土)、30日(日)
   今年の年末年始の海外旅行人数は73.4万人で過去最高になると予測する。2017年の海外旅行者数は1,789万人と過去2番目の数字となった。今年1月~10月までの累計も対前年比5.2%増の1,565万人で推移しており(日本政府観光局11月発表)、年末にかけても好調に推移すると見られ、このまま行けば過去最高だった2012年の1,849万人を超える可能性も考えられる(図3)。
   燃油サーチャージは2017年2月に復活し、2018年8月に値上がりしているが、12月~1月の発券については据え置きとなっている。8月以降も海外旅行者数に影響が出ていないことから年末年始の旅行についても影響は少ないとみられる。為替レートはほぼ前年並で推移している(表4、表5)。海外旅行平均費用については燃油サーチャージの上昇と、長い休みを利用してヨーロッパなどの遠距離の旅行に行く人も多いと思われることから、214,000円(前年比+3.9%)と予測する。   
   出発日のピークは12月29日(土)、30日(日)となるが、近場のアジアを中心に年始の1月2日水)、3日(木)の出発も多くなっている。方面別の旅行人数予測では、サイパンへの減便が続きグアム•サイパンが減少、韓国や香港、欧州が前年より5ポイント以上増加となっている(表6)。
   JTBの海外パッケージツアー「ルックJTB」の予約状況を見ると、ハワイや韓国などでは、年末の出発に加えて、1月2日(水)以降の出発も多く、料金の下がる時期を選んで旅行する人も多そうだ。ヨーロッパ方面は引き続き好調で特に北欧などが人気。アジア方面では香港•マカオやベトナムが人気となっている。香港•マカオは10月に香港•マカオ間を陸路でつなぐ「港珠澳大橋」が完成したこともあって注目度が高く、ベトナムはベトナム航空が10月から関西空港からリゾート地ダナンへ就航し、福岡空港~ハノイ線が週4便から毎日運航になるなど新しい旅行先への就航や運航便数の増加が続いている。
 
(図3)日本人の出国者数と前年からの伸び率

出典:日本政府観光局発表データを基にJTB総合研究所作成 (表5)


 
(表5)各年11月25日の為替レート(単位:円)(東京外国為替相場/T.T.S 三菱東京UFJ銀行)
2.国内旅行人数は2,989.4万人(前年比+1.1%)国内旅行平均費用は33,000円(前年比+3.4%)
      出発日のピークは帰省を中心に12月29日(土)、30日(日)年始の出発も多い
   宿泊旅行統計調査によれば、今年の1月~9月の日本人の述べ宿泊者数は、6月末からの豪雨や地震の影響もあり、前年より3%減少しているが、9月単月の速報値では3,649万人泊となり、前年同月比0.7%増と回復の兆しが見えている。今年の年末年始は全体としては休みがとりやすく、ボーナスも増加傾向にあることから、年内や正月明けに旅行したり少し長めの旅行をしたりする人も増えそうだ。この間の国内旅行人数は2,989.4万人(前年比+1.1%)、国内旅行平均費用は33,000円(前年比+3.4%)と予測する。
   同アンケートによると、旅行日数は昨年より「2泊3日」が減少し、「3泊4日」や「5泊6日」が増加し、長めの旅行をする人が増えそうだ(表12)。利用宿泊施設では「夫や妻の実家」が減少する一方、「ホテル」が30.6%(昨年差+2.2ポイント)、「旅館」が15.6%(同+0.4ポイント)と増加し、今年は実家以外に泊まる旅行も多そうだ(表7)。利用交通機関については「乗用車」は65.9%と最も多いが、ガソリンの価格が昨年と比較して上昇しているため、昨年から3.1ポイント減少している。
   「高速/長距離バス」は7.5%(同+4.3ポイント)、「格安航空会社(LCC)」は1.7%(同+0.5ポイント)だ。また鉄道は「高速/長距離バス」に続いて「JR新幹線」が19.1%(同+2.6ポイント)と増加している(図4)、(表8)。旅行先では「近畿」「北海道」と回答した人が昨年より増えている(表10)。
   JTBの宿泊や国内企画商品の予約状況をみると、クリスマス3連休や年内の平日では、沖縄のビーチリゾートや東京ディズニーリゾート®、軽井沢などが人気だ。関東近辺の温泉では料金の下がる1月4日以降の予約も多くなっている。JTB総合研究所が行ったインターネット調査で、今年の年末年始に出かける場所としてどのような場所が気になっているかを聞いてみた。すべての年代で、「食をメインにしたイベント」が最も多くなった、「温泉」は比較的年齢の高い層に多く、「テーマパーク」は若者が多くなっている。
(図4)過去一年間のレギュラーガソリン小売価格の推移

出典:経済産業省「石油製品価格調査」よりJTB総合研究所作成


<参考>インターネット調査より「今年の年末年始に出かける場所として気になっているところ」(複数回答)


(表6)年末年始(2018/12/23~2019/1/3)海外旅行人数推計(単位:千人)

<アンケート結果(表7)~(表14)>
(表7)利用宿泊施設.                                                 (表8)利用交通機関
(海外旅行を除く単一回答)              (海外旅行を除く複数回答)

(表9)同行者                                                  (表10)旅行先
(海外旅行を除く単一回答)                              (海外旅行を除く単一回答)

(表11))旅行目的  
(複数回答)                                (表12)旅行日数
                                                                              (海外旅行を除く単一回答)           

(表13)旅行の出発日【最も遠くへ行く旅行】(海外旅行を除く単一回答)

(表14)旅行に行かない理由(複数回答)

※アンケート結果 ( 表7)~(表14)は無回答や小数点以下の端数処理のため単一回答でも合計100%にはならない 
 
(表15)2000年~2018年 年末年始(12/23~1/3)発表数値の推移 *調査開始は1969年