2022.12.06(火

年末年始(2022年12月23日~2023年1月3日)の
旅行動向、国内旅行者数は2,100万人、対前年
116.7%<対2019年71.8%>(JTB)

■国内旅行者数は2,100万人、対前年116.7%(対2019年71.8%)
■同行者は「家族」が増加、コロナ禍で増えていた「ひとり」は減少へ       旅行先は遠方も徐々に回復、ホテル滞在が大きく増加、都市型観光が回復へ       
■海外旅行人数は15万人(対前年750%、2019年18.1%)を予測                       出入国の規制は緩和されたものの、物価高や資源高、円安の影響が大きい

   JTBは「年末年始(12月23日~1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しをまとめまた。本レポートは旅行動向アンケート、経済指標、業界動向や予約状況などから推計している。

【旅行動向アンケート調査方法】
調査実施期間:2022年11月11日~11月17日
調査対象:全国15歳以上79歳までの男女個人
サンプル数:事前調査10,000名 本調査1,319名(事前調査で「年末年始に国内旅行に行く/たぶ
                  ん行く」と回答した人を抽出し本調査を実施)
調査内容:2022年12月23日~2023年1月3日に実施する1泊以上の国内旅行(帰省を含む。商用
               業務等の出張旅行は除く)
調査方法:インターネットアンケート調査
<現在の社会経済環境と生活者の動き>
1.新型コロナウイルス感染症と旅行•観光の動き
    新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の世界的な流行からまもなく3回目の年末年始を迎える。WHOは「パンデミック解除宣言」を現在も出してはいないが、一部の国と地域を除き、日常生活や経済活動の正常化に向け大きく舵が切られたことにより、感染対策の緩和が進み、特に欧米ではマスクのない暮らしが広がっている。
   旅行•観光分野においても、入国制限の撤廃や隔離期間の短縮などの水際対策の緩和、国際航空便の再開が進み、旅行の早期回復に期待がかかる。国連観光機関(UNWTO)が2022年9月に発表した調査によると、地域差はあるものの、国際観光客数は2024年には世界全体で2019年の約8割にまで回復するとされている。一方で、ウクライナ情勢をはじめとする不安定な国際情勢によるエネルギー価格や物価の高騰は、世界中の人々の生活に影響を与えている。
   日本国内では、2022年10月11日から1日あたりの新規入国者数の上限が撤廃され、陰性証明や隔離期間など入国時の条件の緩和、さらには訪日外国人観光客の個人旅行も解禁となり、日本人の海外旅行と外国人の訪日旅行が容易になった。
   国内旅行については、2021年4月より需要喚起策として県民割など域内旅行に限定した「地域観光事業支援」が実施されてきたが、全国を対象とした「全国旅行支援」が10月11日(東京都は10月20日)から始まったことで、各地で盛況となっている。
   しかしながら、日本国内も円安やエネルギー高による物価上昇が生活に影響を及ぼしつつありまた現在、第8波の新型コロナの感染が拡大し、行動制限の要請はなくとも一定程度の人が旅行を控えるとみられる。全国旅行支援が年内は12月27日で終了する予定でもあることから、旅行全体は本格的回復に向かいつつも、年末年始期間は多少の影響があると予想される。
2.旅行やレジャー消費をとりまく経済環境と生活者意識
   コロナ禍における旅行をとりまく経済環境や生活者意識は、ここにきて大きく変わりつつある。2020年に新型コロナが世界的に広がってしばらくは、行動制限の要請により外出や飲食に関連する消費が減少、その結果可処分所得が増加となり、それに伴うアフターコロナにおける旅行のリベンジ消費への期待が高まっていた。
   しかしながら2022年以降円安ドル高が急速に進み、今年10月22日の外国為替市場では、32年ぶりに一時1ドル150円台を記録した(図表3)。輸入原価の上昇やエネルギー価格の高騰などによる物価上昇が家計に影響を与えている。主な消費者物価指数を見ると、交通•通信以外の項目で上昇が見られ、特にガソリン価格をはじめとするエネルギー関連や電気代の上昇が著しくなっている(図表2)。
   日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」の「現在の暮らし向き(ゆとり)」をみると、「ゆとりがなくなってきた」の割合は、2021年9月以降、それまでの横ばいから増加しており、2022年9月には前年同月比14.4ポイント増加の50.7%になった。生活のゆとり意識は悪化している(図表4)。
   JTBが実施したアンケートで、自身の生活と年末年始の旅行について当てはまる状況を聞いたところ、自身の生活では「いつもより生活費を節約している」は16.6%となった。一方で「趣味や旅行などにかける費用は減らしていない(7.1%)」は2021年度調査から1.2ポイント増加、「先行きがわからないので今のうちに大きな支出を考えたい(4.5%)」は3.0ポイント増加するなど、物価高への対応はする一方で、メリハリをつけて欲しいものには消費する層も一定数いると言えそうだ。
   年末年始の旅行については、「昨年より旅行にお金をかけず質素に過ごす予定(14.9%)」は昨年より1.1ポイント増加した。また「昨年同時期に比べてお出かけや外出する頻度を減らす」が11.0%と「増やす」より多くなった(図表5)。
   「今後1年間の旅行の支出に対する意向」を聞いたところ、「支出を増やしたい」と回答した人は12.1%で、2021年度調査において、「コロナ禍(2020年以降)より旅行支出を増やしたい」と回答した17.3%から5.2ポイント減少した。「支出を減らしたい(44.1%)」は同調査(33.8%)から10.3ポイント増加した(図表6)。2020年の年末が新型コロナ感染拡大期だったことから、昨年はその反動を受け「旅行日数を増やす」「支出を増やしたい」が大きく増えていたが、今年は落ち着きを取り戻した結果となった。 




<2022年~2023年 年末年始の国内旅行動向予測>
3.今年の年末年始期間の日並びは、一般的には6連休で、長期休暇にはなりにくい
   アンケートでは期間中の旅行意向は「旅行に行く(行く/たぶん行くの合算値)」人は16.3%、前年から0.6ポイント減少

   今年の年末年始の一般的な休暇は、12月28日(水)を仕事納めとすると、1月3日(火)までの6連休になる。その前後の平日がそれぞれ3日間続くため休みが取りにくく、例年に比べ長期休暇になりづらい日並びだ。
   前述の事前調査で期間中に旅行に行くかどうか聞いたところ、「行く(8.2%)」及び「たぶん行く(8.1%)」と回答した人の合計は16.3%となり、前年より0.6ポイント減少した(図表7)。コロナ禍前である2019年の調査では「行く+たぶん行く」が20.0%だったことから、旅行意向はコロナ禍前の水準には至らない。
   性年代別でみると男女とも若い年代ほど旅行意向が高い結果でした。「行く(“行く”と“たぶん行く”の合計)」は男性29歳以下が最も高く29.8%、男性30代(26.3%)、女性29歳以下(25.0%)と続いた。一方、旅行意向が最も低かったのは男女70歳以上(男性7.4%、女性7.6%)であった(図表8)。行かない理由は「年末年始はいつも家でゆっくりしているから」が最も多い36.9%、次いで「年末年始は混雑するから(32.1%)」、「新型コロナウイルス感染症がまだ収束していない/拡大の懸念があるから(22.4%)」となった(図表9)。
   事前調査で「年末年始に国内旅行に行く/たぶん行く」と回答した人のうち1,319人に旅行の目的や動機を聞いた。上位から「家族と過ごす(34.9%)」「帰省(25.3%)」「リラックス、のんびりする(25.0%)」となった(図表10)。


4.国内旅行人数は2,100万人(実績推計対前年116.7%、対2019年71.8%)
   年末年始期間(2022年12月23日~2023年1月3日)の国内の旅行動向については、各種経済指標、交通機関各社の動き、宿泊施設の予約状況、各種定点意識調査などをもとに算出し、2,100万人(対前年116.7%、対2019年71.8%)と推計する。また、国内旅行平均費用は37,000円(対前年112.1%、対2019年115.6%)、総額7,770億円と推計する。旅行費用については2泊3日から4泊5日までの割合が上昇したこと(図表12)、実家や知人宅での宿泊が減少しホテル宿泊が増加したこと(図表19)、物価上昇等を考慮して算出した。帰省を含むアンケート調査では出発日のピークは30日だ(図表11)。

5.同行者は「家族」が増加、コロナ禍で増えていた「ひとり」は減少へ
   予定している年末年始の旅行内容の詳細は以下の通りとなった。
旅行日数:「1泊2日」が35.6%と最も多かったものの、前年より0.8ポイント減少した。「2泊3日(28.6%、前年比+2.3ポイント)」「3泊4日(15.5%、同+0.3ポイント)」「4泊5日(7.8%、同+0.1ポイント)」は増加し、5泊以上は7泊を除き昨年より割合が減少した(図表12)。
同行者:「家族づれ」が60.0%と半数以上を占め、昨年からは3.2ポイント増加した。家族の内訳では、「子供づれ(中学生まで)(24.3%)」が1.2ポイントの減少、「夫婦のみ(18.3%)」も0.2ポイント減少の一方で、「それ以外(母娘、三世代等)(17.4%)」が4.6ポイント増加し、同行者の人数が増えている傾向となった。一方、コロナ禍で増加していた「ひとり(19.3%)」は3.6ポイントの減少となった(図表12)。
旅行先:最も割合が高かったのは「関東(22.6%、前年比+0.4ポイント)」、次が「近畿(17.4%、同▲0.1ポイント)」でした。コロナ禍で減少傾向にあった「北海道(6.7%、同+1.1ポイント)」及び「沖縄(3.1%、同+1.0ポイント)」は昨年より増加した(図表14)。
   その方面を選んだ理由は「帰省先なので(37.1%)」が最も高くなっが、前年より5.5ポイント減少した。続いて「行きたい場所があるので(30.6%、同▲3.7ポイント)」「泊まりたい宿泊施設があるので(18.0%、同▲1.1ポイント)」と、いずれも昨年より減少した。「自家用車やレンタカーで行ける場所なので(16.1%、同+5.1ポイント)」「自然が多いなど3密を回避しやすい地域なので(10.6%、同+3.5ポイント)」「新型コロナウイルスの感染者数が少ない地域なので(3.9%、同+0.7ポイント)」など、感染症防止策を意識した選択肢が引き続き増加している一方で、「友人•知人など会いたい人が住んでいるので(13.4%、同+5.4ポイント)」「行ってみたいイベントがあるので(9.2%、同+5.2ポイント)」など、個人の興味に関わる項目が増加した(図表15)。
   居住地別に旅行先を見ると、「中部」以外のすべての地域で、昨年に比べ、居住地域外への旅行需要が増えている。感染防止策に留意しながらも徐々に遠方への旅行が回復している様子がうかがえる(図表16)。
一人当たりの旅行費用:「1万円~2万円未満(23.0%、前年比▲2.5ポイント)」が最も多く、次いで「2万円~3万円未満(18.7%、同+0.6ポイント)」「1万円未満(16.4%、同▲5.3ポイント)」となった。2万円未満は7.8ポイント減少した一方で、2万円以上は「40万円以上(0.2%、同▲0.1ポイント)」を除くすべての項目で増加し、特に「4万円~5万円未満」「7万円~10万円未満」で高い増加率となった(図表17)。
利用交通機関:「乗用車(59.7%)」が最も多く、昨年から5.0ポイント増加した。コロナ禍では乗用車の利用意向が高まったが、現在、ガソリンの価格が高騰しているにも関わらず、依然高い意向となった。その他では「従来の航空会社(13.3%、前年比+0.2ポイント)」「フェリー•船舶(1.9%、同+0.4ポイント)」が昨年より増加している(図表18)。
利用宿泊施設:「ホテル」が43.1%と最も多く、次いで「実家・親族の家(34.5%、前年比▲2.4ポイント)」となった。2021年度調査では「ホテル」は1.3ポイント減少し34.6%でしたが、今回の調査では8.5ポイント増加した。一方、「旅館」は6.9ポイント減少した。コロナ禍では感染症防止の観点から、自然や温泉地に近い旅館の滞在意向が高い傾向でしたが、ホテルが回復しつつあり、都市部への意向が高まっている様子がうかがえる(図表19)。




6.感染防止に向けた特別な配慮は続くも、意識は徐々に正常化へ
   新型コロナの日本国内での発生状況は、秋ごろから第8波を迎えている。アンケートでは新型コロナの現状を踏まえて「年末年始の旅行において特別に考慮すること」と「懸念していること」、そして「新型コロナの感染状況が拡大した場合の対応について」聞いた。
   「特別に考慮すること」で最も高かったのが「公共交通機関を使わずに、自家用車やレンタカーを使う(24.6%、前年比▲3.2ポイント)」、次いで「家族•親族や親しい友人以外には会わない(24.3%、同▲5.2ポイント)」「少人数の旅行にとどめる(20.4%、同▲3.3ポイント)」で、ほとんどの項目が昨年よりポイントを下げる結果となった。
   その中で「人が多数移動する時間を避ける(18.3%)」は昨年から0.5ポイント増加した。また新たに追加した「外国人観光客の増加などにより、混雑が予想される観光地は避ける」は9.6%となった。また「コロナ禍の旅行で特別に考慮することはない(22.0%)」は昨年より5.0ポイント増加した(図表20)。
   「懸念していること」で最も高かったのが、「日本国内における新型コロナの再拡(49.5%)」、次いで「物価高の影響(34.3%)」「ガソリン代の燃料費高騰(32.7%)」となった(図表21)。また「新型コロナの感染状況が第7波(2022年夏ごろ)と同規模に拡大した場合の対応」について聞いた。結果は「予定通り出かける」が64.7%と最も多く、「その旅行は延期または中止する(13.8%)」が続いた。コロナ禍も3年目となり、十分な感染防止策を実施しながら旅行する人の割合が増加している(図表22)。

7.今年の年末年始で気になるところは「季節ならではの買い物が楽しめる場所」「自然が楽しめる場所」「東京ディズニーリゾート®」
   今年の年末年始に旅行や日帰りで出かける場所として、どのような所が気になっているか聞いてみた。「季節ならではの買い物が楽しめる場所(14.3%)」が最も高く、次いで「自然が楽しめる場所(国立公園や花畑など景観を楽しむ)(12.8%)」、「東京ディズニーリゾート®(10.1%)」となった(図表23)。
   JTBの宿泊•企画商品の予約状況を見ると前年比115%(12月1日付)となった。東京ディズニーリゾート®を含む関東、3年ぶりにカウントダウンイベントが開催されるユニバーサル・スタジオ・ジャパンを含む関西が好調で、年末年始も全国から高い人気となっている。また、北海道や沖縄など遠方の旅行も昨年より増加している。さらに全国旅行支援の年内の対象期間延長(12月21日~27日宿泊分•12月28日チェックアウトまで)も発表されたことにより、間際のお申し込みにも期待がかかる。

8.期間中の海外旅行人数は15万人(対前年750%、対2019年18.1%)を予測
   年末年始期間の海外旅行人数は15万人(対前年750%、対2019年18.1%)、一人当たりの海外旅行費用は260,000円と推計する。費用は2000年以降の当社調査では過去最高となる。この理由として、ウクライナ情勢による世界的な物価急上昇など経済への影響が大きくなっていることや、円安が進み対米ドルや他の主要通貨に対する大幅な下落が滞在費に影響を与えていることが考えられる。さらに航空運賃の値上がりに加え、原油高が燃油サーチャージの高騰にもつながっている。
   今の海外旅行の実施時期についての考え方で最も多かったのが、「国際情勢や感染症がまだ不安なので、今年度は旅行しない(22.3%)」、続いて「円安や物価が上がっているので、今年度は旅行しない(21.8%)」となり、消極的な意見が上位となった(図表24)。
   しかしながら、世界の多くの国々では経済の正常化に向けすでに水際対策が緩和されている。以前は対応が比較的厳しかったアジア•太平洋地区では、オーストラリア•ニュージーランドや東南アジア各国などが日本に先駆け緩和を進め、交流が回復すると同時に、航空座席供給数も回復しつつある。
   日本でも、今年のゴールデンウィーク頃から海外旅行商品の販売が再開されたことを機に旅行需要が戻りつつあった。10月から入国時の手続きや規制が大幅に緩和され、海外旅行の本格的回復に期待がかかる。
   このような背景から今年の年末年始の海外旅行は、比較的経済的に余裕がある層や明確な目的を持った層が、新型コロナ対策の緩和が先行している地域に行くことが予測される。JTBの海外企画商品では、ハワイ、グアム、韓国、タイなどの売れ行きが好調だ。