米菓用に適した多収の水稲モチ新品種「ゆきみのり」を育成
農研機構、国産米を原料とした米菓の安定生産に向けて…

農研機構は、米菓加工適性があり、安定して収量性が高い水稲モチ新品種「ゆきみのり」を育成した。収量性は一般的なモチ品種である「ヒメノモチ」よりも高く、標肥栽培で13%、多肥栽培で8%多収できる。モチの硬化性が「ヒメノモチ」よりも高く、また「ゆきみのり」を加工した米菓(かきもち)は歯ごたえ、歯ごなれが良く、食感の良さが認められたことから、米菓加工適性が高いといえる。

写真1.「ゆきみのり」の草姿(左:ゆきみのり、右:ヒメノモチ).png

 新潟県内の米菓業界で原料用として利用できる可能性が高いと評価され、平成26年度からの作付けが計画されている。なお、この「ゆきみのり」は、品種登録出願番号第28214号 (平成25830日品種登録出願公表)となっている。
 この背景は、近年、国産の加工用米に対する需要が伸びており、それに伴って加工用米に適する品種が求められている。米菓業界でも、国産米を原料とした米菓に適する加工用モチ品種への要望が高くなっている。この加工用モチ品種には、米菓への加工適性が優れていることのほかに多収性が求められる。
 そこで今回、米菓業界の要望に応えるために、米菓加工適性があり、安定して収量性が高いモチ品種の育成を目指した品種となつている。

 経過は平成12年に農研機構中央農業総合研究センター北陸研究センターにおいて、中生で多収の「北陸糯175号」と早生で多収の「奥羽糯373号」を交配して、育成を開始した。19年に「北陸糯216号」の名前で、関係する県で奨励品種決定調査を開始。22年に亀田製菓株式会社(新潟県新潟市)との共同研究で、米菓加工適性、収量性の調査を開始。24年に新潟県との共同研究で、加工用米の展示圃の中で特性調査を開始。平成25年に「ゆきみのり」として品種登録出願となった。

写真2.新潟県上越市における「ゆきみのり(左:ヒメノモチ、右:ゆきみのり).png

 新品種「ゆきみのり」の内容は、1「ヒメノモチ」と比べて、出穂期が同じで成熟期がやや遅く、育成地(新潟県上越市)では早生品種になる 2「ヒメノモチ」と比べて、稈長は同程度で、倒伏に対する強さも「ヒメノモチ」と同程度 3玄米千粒重は「ヒメノモチ」よりわずかに軽いが、「ヒメノモチ」よりも高い収量性があり、標肥栽培で13%、多肥栽培では8%多収 4いもち病にはやや強く、耐冷性、穂発芽性は、ともに中程度 5モチの硬化性は「ヒメノモチ」よりも高いため、「ヒメノモチ」よりも早く硬くなる 6亀田製菓()との共同研究により、「ゆきみのり」の米菓(かきもち)は、「たつこもち」と比べて歯ごたえがあり、歯ごなれが良いことが明らかになった。生地が硬くなりやすいために米菓の表面に細かいヒビが生じ、食感の良さが認められたことから、米菓加工適性が高いと評価できる 7.ふ先色(せんしょく)が赤色のため、一般のウルチ品種(ふ先色が白)と区別することができる。 
 今後の予定では、「ゆきみのり」は新潟県内の米菓業界で原料用として利用できる可能性が高いと評価されたため、平成26年度から新潟県内での作付けが計画されており、国産米を原料とした米菓の安定生産に貢献できることが期待されいる。

写真3.「ゆきみのり」の籾と玄米(左:ゆきみのり、右:ヒメノモチ).png


写真4.試作したかきもち(平成24年亀田製菓株式会社)(左:ゆきみのり、右:たつこもち).png