食と農に関するメディアセミナー「日本の食と農の現在と未来について」
2月4日に開催し、各界の有識者が農業の活性化に必要なことを提言する

 食と農に関するセミナー事務局は2月4日(火)、TKPガーデンシティ竹橋にて「日本の食と農の現在と未来について」と題してメディアセミナーを開催した。
 日本の食料事情を見ると、人口増加に伴い世界の食料需給が今後不安定になると予測される中、日本は食料の多くを輸入に頼っているが、その一方で耕作放棄地の拡大など農業の生産力が低下している。このため将来にわたって食料の安定供給を確保するためには、農業の活性化を図り、食料自給率・自給力の維持向上を図ることが課題となっている。
 そこで今回のセミナーでは、政府関係者や世界の食料問題の専門家、食品メーカーの方を招いて、以下の通り世界と我が国の食料事情についての基調講演や農業の活性化をテーマとしたパネルディスカッションを行った。なお、このセミナーは農林水産省の事業である「日本の食を広げるプロジェクト」の一環として開催された。

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 基調講演を要約すると、まず、農林水産省大臣官房食料安全保障課長の太田豊彦氏が「日本の食と農」についてまとめたファクトブックをもとに、日本の食事情の解説をした。食料の多くを輸入に頼り、農業の生産力が低下している中で、緊急時の食料供給力を示す「食料自給力」の維持向上が重要であり、このためには農業の活性化が必要であることから、カロリーベースと併せて生産額ベースの食料自給率にもっと目を向けていく必要があると解説した。
 続いて、資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫氏が「世界と我が国の食料需給の現状について」と題して基調講演を行った。飛躍的に拡大する世界の食料需給を解説し、日本がこれまで追求してきた「3つの安定」(価格、供給、品質)を守るためには、農業資源のフル活用、備蓄の拡大、輸入先の多角化を図る必要があると解説した。
 最後にカゴメ(株)執行役員の藤井啓吾氏、農林水産事務次官の皆川芳嗣氏、柴田氏の3名によるパネルディスカッションを行った。議題は「農業の活性化には何が必要か~農業分野のブランド化を通じた挑戦~」で、企業(藤井氏)、行政(皆川事務次官)、専門家(柴田氏)の3つの立場からそれぞれ意見をいただいた。
 藤井氏は自社の取り組みである「カゴメ生鮮野菜事業」を紹介。農業の活性化に貢献できるよう、新しい農業生産の実現、野菜の流通の近代化、トマトの新しい需要の創造を目指していると述べた。皆川事務次官はこれまでの農業政策がやや内向き感が強かったと述べ、国内市場が伸び悩む中、アジア市場に目を向けるとともに、例えば、飼料用などに米の用途を拡大していくなど、これまで当たり前だと思っていたことを見直し、政策を変えていく必要があると言及した。柴田氏は、プロダクトアウトからマーケットインの農業に変化すべきだと意見。皆川事務次官もそれに賛同した。
 パネルディスカッションの最後には、農業の未来に対するキーワードをそれぞれが発表。柴田氏は「萃点(すいてん)としての農業・農村を見直す」と発表し、流通や学問などの様々な事柄が結びついたものとして農業を捉え直すべきだと主張した。藤井氏は「施設園芸型農業の活性化(規制緩和)」とし、オランダで多く建設されているガラス温室が日本では規制されていることをあげ、規制緩和を通じて農業を活性化させるべきだとした。皆川事務次官は「和と輪」を発表。和食の世界遺産登録をきっかけに、和食を世界に広めていくべきだということと、現状ではバラバラになっている農業に関するバリューチェーンを、輪のようにつなげていくべきだということを述べた。

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 この食と農に関するメディアセミナー「日本の食と農の現在と未来について」は、2月4日(火)14:00-15:30まで、TKPガーデンシティ竹橋 カンファレンスルーム11Fで行われた。出席者は、前述したように藤井啓吾氏(カゴメ(株)執行役員)、柴田明夫氏(資源・食糧問題研究所代表)、皆川芳嗣氏(農林水産事務次官)、太田豊彦氏(農林水産省大臣官房食料安全保障課長)。
この件に関するお問い合わせ先は、「食と農に関するセミナー事務局」
〈電通PR内 担当:佐藤〉まで(電話03-5565-8437)。