「営農計画策定支援システム Z-BFM」(農研機構)

今回発表された「Z-BFM」は、所定の条件下で最も農業所得を高める作付計画案を容易に算出している。事前に規模拡大や作物導入等が農業経営へ与える影響を調べ、その結果を踏まえた計画案を策定することで、営農展開を支援することができる。
農研機構がJA全農営農販売企画部と連携して開発した「Z-BFM」は、今後の営農展開の指針に活用できるツールとして注目されている。「Z-BFM」は、農家の経営面積や労働時間、各作物の粗収益、変動費、作業時間等を設定することで、所定の条件下で最も農業所得を高める作付計画案を容易に算出する。経営規模の拡大、雇用の導入、新規作物の導入等が農業経営へ与える影響を「Z-BFM」を利用して確認し、それを踏まえた計画案を策定することで、営農展開を支援することができる。
「Z-BFM」は、LinkIconWebサイト(http://fmrp.dc.affrc.go.jp/programs/)から自由にダウンロードできる。これまでに4千件以上ダウンロードされ、その多くは農協及び公的な普及支援機関や農業者の方々だ。またJA全農営農販売企画部では、「Z-BFM」を組合員農家の営農指導やTAC活動における主要ツールとして位置づけ、利用の促進に積極的に取り組んでいる。
営農支援活動では具体的な営農計画案を提示し、農業経営者と相談しながらより良い営農改善策を見いだしていくことが重要になっていた。また、この営農計画案はそれが実施できることを保証する計画案であることが求められていた。このような計画案が容易に作成でき、複数の計画案の比較のできるツールが求められていた。以上の点がこの研究の背景にあった。

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■ 研究の経緯

これまで営農計画案は、計画の作りやすさと計画案の読みやすさから試算計画法 1) に基づく方法で作成されることが一般的でした。しかし、この方法で作成される計画案は、それを実行した時にある時期の労働時間が足りなくなってしまうなど、実施できることを必ずしも保証するものではありませんでした。この問題点を解決するには、線形計画法 2) に基づいて計画案を作成することが有効だ。しかし、線形計画法を用いるには、連立不等式(営農モデル)で経営資源の活用状況を示し、その関係式を解くという専門知識が必要あった。
農研機構では、営農モデルの解法プログラムに加え、営農モデルの構築を支援するプログラムを開発した。しかし、これらを営農現場で活用するには、計算結果として提示される計画案を営農現場で使いやすい情報にするなど、より利用者の利便性を高める必要があった。そこで、実際の営農支援活動での利用ニーズにこたえるため、JA全農営農販売企画部と連携しながら、利用しやすいツールとして「Z-BFM」を開発した。

■ 研究・普及の内容・意義

1. 「Z-BFM」は、Microsoft Excel上で動くツールであり、「経営概況 3)」、「営農条件 4)」、「経営指標 5)」の各シートで設定した条件に基づき、最も農業所得を高める作付面積の組み合わせを線形計画法により計算し、その結果を最適な作付計画案(最適計画案)として利用者が読みやすい形にして提示した(図1、図2)。

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2. 機能の一つである「試算計画実行表」(図3)は、簡単に条件変更ができ、その変更を反映した試算計画案を提示する。試算計画案は労働時間等の制約を十分に踏まえていないといった問題もあることから、利用者は線形計画法に基づく最適な計画案と目的に応じて併用することで営農場面に応じた計画案を作成できる。例えば「試算計画実行表」でおおよその計画案を検討した上で、その計画案の実現性を線形計画法で確認し、妥当性を踏まえた最適な計画案が作成できる。
あるいは、線形計画法による最適な計画案を基準にして、「試算計画実行表」で農地の区画等の現状にあわせて修正した計画案が作成できる。

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3. 「Z-BFM」は平成22年5月から農研機構のWebサイトで試行版(Ver.2)を公開し、ユーザー評価を踏まえて改修した正式版(Ver.3)を平成24年2月から公開しており、ダウンロード数は4千件以上(平成25年11月現在)に達している。ダウンロード者の多くは、農協及び公的な普及支援機関や農業者が占めている(図4)。

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4. JA全農営農販売企画部では、「Z-BFM」を組合員農家への営農指導やTAC 6) 活動における主要ツールとして位置づけている。例えば平成25年度より開始した大規模営農モデル構築パイロットJA 7) の取り組みにおいて、優良営農モデルを構築するための経営シミュレーション作成に活用している。現在その営農モデルの実証(全国6か所)を行っており、平成28年を目途にこの取組みで得られた優良事例を他地区でも展開させる計画だ。
5. このツールをさらに普及させるため、農研機構では県の農業普及機関や農協中央会、全農からの依頼を受けて、関係職員を対象にした研修会の開催や講師派遣を行っている。
また、全農では「Z-BFM」の操作・活用方法の研修会を毎年2~3回程度開催しており、東北から九州までのJA全農県本部等の職員が毎回20~30名程度参加している。この研修を受けた職員を中心にJA全農県本部(山形県、栃木県、岐阜県、滋賀県)が県内のTAC担当職員向けに研修会を実施するなど、今後の展開が期待される。

■ 今後の予定・期待

農地中間管理機構の設立などにより、今後農地の面的集積が進展する見込みである。また新たな事業分野への展開なども含め、より効率的に経営資源を活用しながら農業所得の向上を実現していくことが求められている。このような中、「Z-BFM」を用いて営農計画案を作成することによって経営展開に対する事前評価ができ、より良い計画案を策定して実行していけることが期待できる。
「Z-BFM」の普及を加速させるには、営農実態に即した「経営指標」を整備していく必要があり、類似するデータを有する各都道府県との連携や、近年、大規模土地利用型経営での利用がみられる圃場作業管理システム 8)等とのデータ連携を図っていく予定。

■ 用語の解説

1)試算計画法
計画を構成する様々な条件を任意に変えながら計画案を作成する方法です。営農計画を作成する場合、現実の営農実績を基にして、作付面積の組み合わせ、単位収量、単価、労働時間等を利用者が任意に変えながら計画を立案します。これまでの営農活動を基に、農地の具体的な配置状況や労働従事者の状態を考えながら、電卓や表計算ソフトで手軽に計画案を作成できます。しかし経営資源を最大限に有効利用した最適な計画案が求められないことや、経営資源が足りずに実現が困難な計画案が作成される場合があることに注意が必要です。
2)線形計画法
数学的な手順を利用した計算結果に基づく計画を求める数理計画法の一つです。計算結果を求める式(目的関数)と利用できる経営資源等の制約を示す不等式(制約条件)がすべて一次の関係式で示されていること、求められた計算結果は実数であるという特徴があります。営農計画を作成する場合、主に目的関数が農業所得の最大化として設定され、農地や労働時間等を制約条件にして計算します。この方法では、経営資源を最大限に有効利用した最適な計画案が求められる一方で、制約条件の設定方法などによって農地の区画などで現状にそぐわない計画案が作成される場合があることに注意が必要です。
3)経営概況
「Z-BFM」で設定する計画の対象となる農業経営の現状(農地、労働力、作付作目、所有機械等)の設定内容です。計画案の分析には、あまり影響を与えませんが、経営概況を設定することで対象の農業経営像を鮮明にした上で計画を検討できるとともに、現状と比較した計画案の基礎データになります。
4)営農条件
「Z-BFM」で営農活動の制約となる農地や労働時間に関する経営資源の上限量などの設定内容です。「Z-BFM」は、営農条件で設定された農地と労働時間の範囲内で最適な計画案と提示します。5)経営指標
「Z-BFM」で各作物等の作付面積の組み合わせを計画する時の各作物等の情報を取りまとめたデータセットです。具体的には、単位収量、販売単価、作物等を1単位生産する時に必要な変動費と旬別労働時間などを作物、品種、作型、地目ごとに整理したデータセットです。現実味のある計画案を作成するには、実態に即した経営指標を用いることが重要になってきます。
6)TAC(Team for Agricultural Coordination)
JAグループにおいて「地域農業の担い手に出向くJA担当者」の愛称です。地域農業の担い手とコミュニケーションを図りながら、担い手経営へ役立つ情報を提供する一方で、担い手から頂いた意見をJAグループの業務改善へつなげることが主な役割です。
7)大規模営農モデル構築パイロットJA
JA全農の3か年計画(平成25年度~平成27年度)における重点課題の一つである「元気な産地づくりと地域のくらしへの貢献」に向けた取り組みの一環として、担い手経営体の所得最大化を目指した大規模営農モデルの実証をすすめる取り組みのことです。
8)圃場作業管理システム
地理情報システム(GIS)を活用して圃場単位で農作業の活動内容等の情報を収集した上で、蓄積した情報から圃場ごとの作業計画や作業進行管理等に活用するシステムです。
この件に関するお問い合わせ先は、農研機構中央農業総合研究センター企画管理部情報広報課課長補佐 根本康夫まで(電話029-838-8421、FAX029-838-8858)