国産のリゾット用米の普及が期待される‼

14.04.22(火)

 国内のイタリア料理店では、イタリア産米が高価であることや地産地消への関心の高まり等から、リゾットに適する国産の大粒米が求められていた。
 農研機構は実需者からの要望に対し、リゾットへの調理適性があり、倒伏に強く栽培しやすい水稲新品種「和みリゾット」を育成した。収量性はリゾットに適するイタリア品種「CARNAROLI(カルナローリ)」よりも高く、玄米千粒重は「CARNAROLI」並の極大粒である。
 リゾットに調理した「和みリゾット」は、「コシヒカリ」よりも外観に優れ、歯ごたえがあり、粘りがなく、べたつかず、煮崩れしにくく、総合的に「CARNAROLI」に近い評価であつた。国内のイタリア料理店での評価も高かったことから、新潟県柏崎市で国産リゾット用米としての作付けが予定されている。
 この背景•経緯ついてイタリア原産の大粒品種「CARNAROLI」は、リゾットに最適とされているが、稲は倒れやすく低収量で、脱粒、穂発芽しやすい問題があり、イタリアからの輸入米としては高価になっている。
  一方、「コシヒカリ」等の国産米は粒が小さく、イタリア産米とはリゾットに調理した際の外観や食感が異なることが問題となっている。現在、国内のイタリア料理店ではイタリア産米が高価であることや、食の安全・安心、地産地消への関心の高まり等から、リゾットに適する国産の大米が求められていた。
 この要望に応えるため国内初のリゾット用品種として、「CARNAROLI」を品種改良した「和みリゾット」を育成した。平成18年に農研機構中央農業総合研究センター北陸研究センターにおいて、「北陸204号」と「CARNAROLI」を交配して育成を開始した。
 平成24年に(株)結アソシエイト、(有)ファーミング・スタッフ(新潟県柏崎市)、新潟大学との共同研究の中で、「北陸253号」の名前で現地実証試験、リゾットへの調理適性試験を開始。平成25年に「和みリゾット」として品種登録出願した。

和みリゾットは早生品種で、やや短く、歯ごたえがある

 「和みリゾット」は「ひとめぼれ」と比べて、出穂期が1日程度早く、成熟期は3日程度早く、育成地(新潟県上越市)では早生品種になる(表1)。稈長は「ひとめぼれ」と比べてやや短く、「CARNAROLI」より明らかに短くなっている。倒伏に対する強さは、「ひとめぼれ」「CARNAROLI」に優る(表1、表2)。
表1.「和みリゾット」の生育特性.png
表1.「和みリゾット」の生育特性

表2.「和みリゾット」と「CARNAROLI」の比較.png
表2.「和みリゾット」と「CARNAROLI」の比較

 収量性は「ひとめぼれ」よりも劣るが、「CARNAROLI」よりも高く、玄米千粒重は「CARNAROLI」並の極大粒(表1、表2)。いもち病 2) 抵抗性は、葉いもちには“強”、穂いもちには“弱”。耐冷性 3) は中程度、脱粒性は“難”、穂発芽性 4) は“やや難”(表3)。
 リゾットに調理した「和みリゾット」は、「コシヒカリ」に比べて外観が優れ、歯ごたえがあり、粘りがなく、べたつかず、煮崩れしにくくなっている。総合的には、「コシヒカリ」に優り「CARNAROLI」に近い評価で、リゾットへの調理適性が認められる(表4)。
表3.「和みリゾット」の障害抵抗性.png
表3.「和みリゾット」の障害抵抗性

表4.リゾットに調理した「和みリゾット」の食味評価.png
表4.リゾットに調理した「和みリゾット」の食味評価

 今後の予定・期待として「和みリゾット」は、リゾットへの適性が認められ、国内のイタリア料理店での評価も高かったことから、新潟県柏崎市で平成26年度から作付けが予定されており、国産のリゾット用米の普及が期待される。

写真1.「和みリゾット」の草姿(左:和みリゾット、中:ひとめぼれ、右:あきたこまち) .jpg
写真1.「和みリゾット」の草姿(左:和みリゾット、中:ひとめぼれ、右:あきたこまち)

写真2.育成地(新潟県上越市)における「和みリゾット」(左:ひとめぼれ、中:和みリゾット、右:CARNAROLI) .jpg
写真2.育成地(新潟県上越市)における「和みリゾット」(左:ひとめぼれ、中:和みリゾット、右:CARNAROLI)

写真3.「和みリゾット」の籾と玄米(左:ひとめぼれ、中:和みリゾット、右:CARNAROLI) .jpg
写真3.「和みリゾット」の籾と玄米(左:ひとめぼれ、中:和みリゾット、右:CARNAROLI)

写真4.新潟県柏崎市における「和みリゾット」.jpg
写真4.新潟県柏崎市における「和みリゾット」

■用語の解説

  1. リゾット:イタリアの米料理の一つ。米に油を加えて炒め、スープを加えながら炊いたもの。多くの場合、仕上げにチーズを入れます。
  2. いもち病:稲の重要な病気の一つで、糸状菌(かび)により感染、発病します。葉に出るものを葉いもち、穂に出るものを穂いもちといい、品種によって抵抗性に差異があります。抵抗性が弱いと、枯れて減収しやすくなります。
  3. 耐冷性:寒さに対する抵抗性で、品種によって差異があります。抵抗性が弱いと、冷害時に籾に実が入らず、減収しやすくなります。
  4. 穂発芽性:降雨等で穂に籾が着いた状態で、籾が発芽する性質です。発生すると、玄米の外観品質が悪くなります。品種によって差異があります。

 この件に関するお問い合わせ先は、農研機構中央農業総合研究センター 北陸企画管理室 連絡調整チーム長 桑原秀洋まで(電話025-526-3215、FAX025-524-8578)