スマート農業の将来像は…

14.04.30(水)

 農林水産省はロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業(スマート農業)を実現するため、ロボット技術利用で先行する企業やIT企業等の協力を得て「スマート農業の実現に向けた研究会」を立ち上げ、平成25年11月から検討を重ねて来た。このたび研究会では、スマート農業の将来像や実現に向けたロードマップ等について中間取りまとめを行った。
 中間とりまとめの経緯では、我が国の農業を巡る高齢化や新規就農者の不足等の厳しい状況の下で、農林水産業の競争力を強化し、農業を魅力ある産業とするとともに、担い手がその意欲と能力を存分に発揮できる環境を創出していくためには、農業技術においても、省力化•軽労化や精密化•情報化などの視点からその革新を図っていくことが重要となる。
 一方、他分野ではロボット技術やICT等の活用が進展し、これらの技術革新が競争力の強化につながっており、農業分野でもその活用が様々な課題の解決や農業の成長産業化に向けた強力な推進力となることが期待される。
 このため、ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業である「スマート農業」 の実現に向けて、経済界等の協力を得て、平成25年11月に本研究会を立ち上げ、検討を重ねてきた。
 今回はその中間とりまとめとして、スマート農業の1 将来像(ロボット技術やICT導入による新たな農業の姿) 2ロードマップ(段階別の実現目標と実現のための取組) 3 取組上の留意事項を概略的に整理し、今後、関係者一体となって必要な取組に着手するとともに、さらに具体的な検討を深化させていく。
 スマート農業の将来像は、ロボット技術やICT等の様々な分野の方々の協力を得て、我が国農業が直面する課題を解決し、新たな農業(スマート農業)を拓いていくには、スマート農業の将来像をわかりやすく提示し、関係者で方向性を共有して取組を進めることが重要である。
 このため、ロボット技術やICTの導入によりもたらされる新たな農業の姿を以下の5つの方向性に整理した(別添1)。

  • 1 超省力・大規模生産を実現 トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破
  • 2 作物の能力を最大限に発揮 センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培 (精密農業)により、従来にない多収・高品質生産を実現
  • 3 きつい作業、危険な作業から解放収穫物の積み下ろし等重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔等の除草作業を自動化
  • 4 誰もが取り組みやすい農業を実現 農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、 経験の少ない労働力でも対処可能な環境を実現
  • 5 消費者・実需者に安心と信頼を提供 生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結


 スマート農業の実現に向けたロードマップ
将来像を実現していくためには、土地利用型作物、園芸、畜産といった品目毎に導入が期待される技術を整理し、相互関係・相乗効果等を意識しながら現場導入に向けて具体的な取り組みを進めていくことが必要である。
トラクターの自動走行等の特に重要な技術分野については、3年後、5年後又は長期的に開発すべき技術(マイルストーン)を明確にし、さらにその実現に向けて必要な各種の取り組みをロードマップに整理した上で、関係者が協力して取り組むこととする(別添2)。
このロードマップについては、今回は案として提示したもので、 最新の知見等を踏まえつつ、引き続き具体化等を図ることが重要である。
スマート農業推進に当たっての留意点等では、これまでの研究会の議論においては、1生産現場や他産業の視点から、今後スマート農業の推進に当たっての留意点、2中期的に検 討していく課題等について様々な意見が提起されたところである(別 添3)。
このうち、農業分野でのロボット技術の安全確保策のあり方について本研究会内で検討を深めていくほか、その他の諸留意点・課題 についても、今後のロードマップ等の検討に当たって随時振り返るとともに、必要な場合について本研究会以外の関係者とも連携を図って行くことが重要である。

スマート農業の実現に向けた研究会委員一覧 〈参考〉

井澤徹(東京海上日動火災保険(株)公務開発部長)伊勢村浩司(ヤンマー(株)開発統括部先行開発部長)井幡晃三(総務省情報流通行政局情報流通振興課企画官)岩部孝章(井関農機(株)商品企画部担当課長)臼井克也((株)クボタ技術開発グループ長)江口純一(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課長)大畑毅(日本電気(株)新事業推進本部シニアエキスパート)荻野 勝彦(トヨタ自動車(株)渉外部第2渉外室長)藤井郁乃(トヨタ(とよた)自動車(じどうしゃ)(株(かぶ))渉外(しょうがい)部(ぶ)第(だい)2(2)渉外室(しつ)主査(しゅさ)(平成(へいせい)25(25)年(ねん)12(12)月(がつ)まで(まで))久保省三(全国(ぜんこく)農業協同組合連合会営農販売企画部長)澁澤栄(東京農工大学大学院教授)神成淳司(内閣官房政府CIO補佐官)須藤治(経済産業省製造産業局産業機械課長)髙﨑克也((株)AGL社長)高橋洋(厚生労働省労働基準局安全課副主任中央産業安全専門官)谷川民生(独)産総研知能システム研究部門統合知能研究グループ長)寺島一男((独)農研機構中央農業総合研究センター所長)西口修((株)日立ソリューションズ社会システム事業部GIS部長)野口伸( 北海道大学大学院教授)野田哲男(三菱電機(株)先端技術総合研究所主席研究員)野村栄悟(内閣府宇宙戦略室参事官)松川雅彦(内閣府宇宙戦略室参事官)三浦尚史(三浦農場代表)山口聡(日本電信電話(株)研究開発部門エグゼクティブプロデューサー)若林毅(富士通(株)イノベーションビジネス推進本部SVP)
※オブザーバー (一社)日本経済団体連合会、 (一社)日本農業機械化協会、 (一社)日本農業機械工業会、 (公社)日本農業法人協会、 国土交通省自動車局技術政策課