「道の駅 小谷」は関東でベスト9位

2014.11.15(土)

 雪が舞う季節となった信州小谷村。国道148号線沿いにある「道の駅 小谷」(北安曇郡小谷村北小谷)がある。この村のキャッチフレーズは「緑と雪と温泉のふるさと」だ。雄大な北アルプスの山々を望み、厳しくも豊かな自然に囲まれ、日本の原風景が残る里山エリアでもある。
 元々「千国街道 塩の道」と呼ばれ、中南信地方にとって海に向う重要な道であった。国道のみならずJR大糸線も走り、「道の駅 小谷」と「深山の湯」の眼下には姫川も流れている。この「道の駅 小谷」は昨年、全国の人気道の駅でベスト50位に選ばれ、関東整備局管内でもベスト9位になり、「関東道の駅アワード2014 プレミアム30」(読売新聞社主催)にも選ばれている。

1_「道の駅 小谷」外観.JPG

 さて同施設は売店の小谷物産ショップ(10時〜21時営業)、源泉かけ流し天然温泉の「深山の湯」(10時〜21時)、食堂の「鬼の厨(くりや)」(11時〜21時)、その他にトイレ棟があり、駐車場は普通車、大型車含めて約90台分を設けている。なお、「鬼の厨」の一階のレストラン席は60席、二階はお座敷で60畳(30畳の二間)と8畳の部屋がある。毎週水曜日が休みで、年末年始、GW、8月、10月は休まず営業している。
 「道の駅 小谷」は1999年にオープンし、2009年に「(株)道の駅 おたり」が設立され運営にあたっている。同施設はインターから2時間も離れているにも関わらず、全国でも有数な「道の駅」になったのは、「イキイキ感」と「丁寧な人的サービス」を提供して来たことにある。

売店店内売店レジと地元農産物

 その姿勢を訴える幾田美彦社長のお話を聞いていると、「今だけ、金だけ、自分だけ」という3だけ主義の克服と新しい日本を唱える経済アナリストの藤原直哉氏の知見をそのままに伝わって来る。まず「経営者不在の経営は…」ということで第三セクターからの脱却。村、農協、森林組合等から株を譲り受け、株式会社の経営に切り替え、豪雪地帯の克雪として村の人たちの「働く施設」(村のコア的存在)にしたことだ。
 そして「道の駅」の本来の宿場的存在を胆識し、道路利用者の休憩施設、情報発信機能、道の駅を核としてその地域同士の連携する地域連携機能以外にも観光、防災、地域福祉の拠点的存在に高めた。幾田美彦社長は一つの「地方創生」の第一人者といっても過言でないだろう。
 (株)道の駅 おたりの年商は3億3000万円、従業員は正社員6名、パート•アルバイト30名。経営者、管理者、社員の給与体系は成功報酬制、パート•アルバイトも能力給にして、くだんのイキイキ感と人的サービスが魅力の過疎化地域(人口3千人強)の働く施設、地元の愛される施設として機能させている。
 「道の駅 小谷」のコンセプトとオペレーション、働く人のモチベーションが幾田社長の納得のいく状況になるには2、3年かかったという。それを支えるのは鬼の厨支配人の林憲治氏(大阪出身)だ。若いスタッフのアイデアも積極的に活かしている。また、同施設は年配者も多いため、継続雇用70歳まで延長している。
 さて、鬼の厨(レストラン)の魅力を述べてみよう。同店の年商は9,000万円あり、売れ筋はかまど定食、お蕎麦、塩ラーメンで、一人当たりの平均客単価は1,200円。小谷産コシヒカリを釜戸で炊いたご飯と小谷の旬菜セット「かまど定食」は魅力的だ。

鬼の厨店内5つのかまどが並んでいるセルフサービスの漬物コーナー6_日替わりかまど飯定食(酢豚)

 明るく綺麗な壁にあるサインボードメニューを見ながら奥に入ると、手前に5つの釜戸とオープンキッチンが見えてくる。3つの釜戸でご飯を一升ずつ、ガスではなくペレットで炊き、2つの釜戸は70度のお湯で保温している。小谷村産コシヒカリのご飯の美味しさをそそる見事な演出だ。同店のイチオシ「日替わりかまど飯定食」は1,050円で提供している。本日のおかずを変えることも出来る。この他に小谷定食1,100円、小谷産野豚の温玉カツ丼1,100円、ミニ天丼、ミニ豚すき丼それぞれ480円もある。
 売れ筋メニューの小谷村産地粉の手打ち蕎麦はざるそばが800円、ざるそば大盛り1,050円、天ざるそば、ざるそばミニ天丼セット、ざるそばミニ豚すき丼セットはそれぞれ1,280円となっている。また、千国街道•塩の道をイメージした特製生麺使用の塩ラーメンは700円。塩ラーメンミニ豚すき丼セット、塩ラーメンミニ天丼セットは1,000円。チャーシュー麺(塩)900円、ミニ塩ラーメン400円、お子様塩ラーメン500円を揃えている。

11塩ラーメンミニ天丼セット.JPG

 手作り一品ではご飯セット(ご飯、味噌汁、漬物付き)580円、かまどご飯単品320円、豚汁単品260円、信州サーモンお刺身550円、信州豚のもつ煮550円、野菜のコロッケ330円、肉じゃが300円、てんぷら盛り合わせ600円、野豚のとんかつ780円、この他にサンマの甘辛煮、冷奴、うま煮、ふわふわ玉子焼き、茄子の揚げびたし、大根サラダ、信州産玉子かけセット、ポテトサラダ、おでん(三点巾着〈玉子、シラタキ、ちくわ入り〉、豚ナンコツ、大こんにゃく)があり、メニューは全て税込価格である。

ふわふわ玉子焼き茄子の揚げびたし

 ドリンクは店舗中央部分にボトル棚が置かれ、地酒や焼酎等が置かれている。地酒の生酒として、小谷杜氏醸しの酒(100ml)の小谷錦純米吟醸、雨飾山純米酒500円、大雪渓純米吟醸450円、
大雪渓純米にごり400円、白馬錦雪どけ吟醸生450円、北安大国濃醇生原酒400円をラインナップしている。この他に燗酒1合400円〜700円、2合700円〜1,100円。利き酒セット600円、焼酎は菊芋焼酎「掬乃助」、南瓜焼酎「小谷の風丸」、芋焼酎「満点」を揃えている。
 ビールはキリン一番搾り生ビールは大900円、中550円、一口グラス250円。瓶ビールはクラシックラガー中瓶600円、スーパードライ中瓶600円、キリンフリー(ノンアルコール)450円、またハイボール450円もある。ソフトドリンクはクリームソーダ380円をはじめ、ブレンドやカプチーノなど16種類を200円〜300円で提供(食事とセットでソフトドリンクは100円となる)。また、ソフトクリームも人気だ。
 メニューを一通り紹介したが、ここで提供しているお米、そば、野豚は何れも小谷産にこだわり、同社ではお米8㌧、蕎麦粉5㌧、野豚60頭を地元から買い付けている。売店の約2,000アイテムの物産ショップも創意工夫して地元産を数多く揃え(一人当たり客単価1,500円)、地元農産物や郷土食品の情報発信をしている。まさに同施設は地域エコノミストの藻谷浩介(もたに こうすけ)氏が提唱する里山資本主義を実践している。
 もう一つのウリはその昔からある小谷の温泉。同施設に併設して「深山の湯」があり、源泉かけ流しの天然温泉で身体に優しく、旅の疲れも癒される。入浴料は620円、食事をすると入浴料は半額の310円となり、お得感を提供している。
 「(株)道の駅 おたり」の代表取締役社長の幾田美彦氏(54)は大阪出身。大学中退後、信州で遊学し38歳まで信州で山のガイドを務めていた。山を愛する感性と使命感、そして生活の智慧から生まれ、具体的な行動の積み重ねの体験と経営感覚が今花開いている。

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幾田美彦社長(写真右)と林憲治店長