サンクゼールが飲食物販複合店

「久世福食堂」&「久世福商店」
軽井沢SPプラザに同時オープン

 ジャム、ワインなどの製造小売業の(株)サンクゼール(本社上水内郡飯綱町、久世良三社長)は7月17日、同社最大級新業態の飲食物販複合店「久世福食堂 軽井澤本店」•「久世福商店 軽井澤店」を軽井沢プリンスショッピングプラザニューウエスト区画内に同時オープンした。
久世福商店店内.JPG久世福商店店内
 一年前から準備を進めてきた新業態大型飲食店「久世福食堂 軽井澤本店」(約140坪、席数約200席)と和グロサリー店「久世福食堂 軽井澤本店」(約43.8坪)は、ワンフロアで繋がっており、大正モダンと〝見世蔵〟をモチーフとした『久世ワールド』が展開されている。
 久世良三社長によると「和をベースとしたショッピングと食事の両方を愉しむことが出来る『食』のエンターテインメント空間にした」という。言い換えれば『食』のエキサイティングを狙った空間とも言える。「久世福食堂」では久世福商店の目利きバイヤーが全国を巡り見つけた逸品を食べ比べ出来るメニューをラインナップしており、一方「久世福商店」ではそのこだわりメニュー食材を買い求めることが出来る仕組みを目論んでいると云えよう。
食堂2.JPG食堂
 また、同社は6月20日にこの飲食物販複合店に隣接して、別ブランドの「サンクゼールワイナリー 軽井澤店」(約25.3坪)もリニューアルオープンしている。今回の3業態複合店舗オープンの総面積は205坪となり、自社最大規模の店舗の開業となった。3業態複合店舗の年間売上高は約4億円を見込んでいる。
IMG_0187.JPGサンクゼールワイナリー 軽井澤店
 さて「久世福商店」や「サンクゼール」は過去にも何回か紹介させて頂いたので、新業態「久世福食堂」について少し具体的に触れてみたい。くだんの様に「久世福食堂 軽井澤本店」は、〝目利きが見つけた逸品食べ比べ、日本全国うまいものダイニング〟がコンセプトだ。久世福商店の7人のバイヤーが全国を巡って見つけたそれぞれの故郷で親しまれ愛された逸品を、美味しい召し上がり方の調理提案し、そして堪能頂く体験型レストランという。
 同社は「久世福食堂 軽井澤本店」の5つの大きな特徴について触れている。その一つは地元の新鮮野菜を使った「野菜バー」。長野県産や近隣地域の野菜の提供する。表面をさっと炙った「焼き野菜」揚げたての「野菜の天ぷら」だし汁に漬けた「出し煮浸し野菜」「漬物」などの季節に合わせ多彩な料理方法で提供するという。「たっぷり野菜 食べ放題」1,000円+税がウリだ。
焼き野菜コーナー.JPG焼き野菜コーナー
 二つ目は食物販と飲食の融合だ。紹介した通り、こだわりの商品を家庭で美味しく召し上がって頂くための提案と体験が出来る。例えば「魚屋のミックスフライ定食」1,700円+税、「駿河湾産マグロかま照焼1,800円+税という具合だ。
 三つ目は「出しがたっぷり、出汁巻き玉子」をお客様から見える店頭専用室で焼き上げている点だ。久世福商店の看板商品は「風味豊かな 万能だし」だ。静岡焼津産の鰹節、北海道の日高昆布、国産の焼きあご、瀬戸内のいりこなどをバランスよく配合したその「万能だし」を使った出汁と信州産の新鮮卵で作る「出汁巻き玉子」は早くも評判になっている。子供らは何倍でもお代わりしたがる。小鉢「出しがたっぷり、出汁巻き玉子」300円+税〜だ。
だし巻き卵.JPG出汁巻き玉子
 四つ目は「軽井沢天然氷のかき氷」を挙げている。薄く削りとられた氷はしっとりした絹のようで、久世福商店の「あんずジャム」「ブルーベリーコンポート」「宇治抹茶」などを提供している。「軽井沢天然氷のかき氷」1,000円+税〜である。
5つ目は開放的なテラス席を用意していることだ。軽井沢プリンスショッピングプラザニューウエスト区画に拡がる開放的な芝生広場(グリーン)に面したテラス席は、夏の軽井沢に吹く爽やかな風を満喫できる。日除けテント、植栽、テーブルにもこだわり、最高の空間を演出している。テラス席は72席(テラス席側からも入店可能)ある。

軽井沢への出店が大きな成長の契機
「見世蔵」がコンセプトの久世福食堂

 今から15年前に(株)サンクゼールが食物販ブランド「サンクゼール」を全国に50店舗展開する第一号店として、この軽井沢のこの地に出店したことを思い出している。以来、同社は飛躍的に伸びていったのである。それだけに現在も最重要エリアとして位置付けており、久世福食堂にとっても初出店の新業態であるだけでなく、飲食物販複合店の旗艦店という位置付けだ。
 統一されたグランドコンセプトを表現した店舗デザイン、消費者感度の高い軽井沢エリアの顧客層を擽(くすぐ)った空間は、6名のアーティストのデザイン理念とディテールが存在している。インテリアデザイナーの新藤力氏は、店舗外観コンセプトを「見世蔵」(江戸期以降に発達した店舗兼住居を兼ねた土蔵の一種)を基調に、「文化•伝統×モダニズム」や「本物の素材×職人の仕事」を基軸に設計している。
 また、久世福商店&食堂のアートディレクションは、アートディレクターの高田正治氏が手掛けている(久世福商店のロゴデザインも制作)。久世福食堂ユニフォームデザインは、映画や舞台のコスチュームデザイナーとして活躍しているSERIKA氏が完成させた。久世福食堂の中央に配置された大テーブル。素材(欅)の素晴らしさを最大限に活かしたシェアテーブルは空間に深い陰翳(いんえい)を与えている。この製作者はアーティストの富田文隆氏だ。
店内中央にあるテーブル.JPG欅大テーブル
 この他にも、久世福食堂のパーテーションは美しい組子細工が織りなしている。食堂内に温もりを提供し、柔らかな光と影を想像し、リゾートでの会食シーンを美しく演出している。この組子細工は栄建具工芸(長野市)の横田栄一氏。25歳で独立し、組子細工一筋。総理大臣賞を五回も受賞している。
 もうひとつ職人技を漂わせるのが、久世福食堂の店舗ファサードを引き締めるいぶし銀の「藤岡瓦」だ。江戸期の豪商の店蔵の特徴は「なまこ壁」には上質な瓦が使われていた。軽井澤本店のファサードには、いぶし銀の風合いが美しい「藤岡瓦」を使ったなまこ壁が組まれている。一枚一枚丁寧に焼き上げたのは、炎の匠の五十嵐清氏である。
 このように6人のアーティストの他にも多くのスタッフが協力した飲食物販複合店「久世福食堂 軽井澤本店」と「久世福商店 軽井澤店」。全体の店長はエリアマネジャーの丸石奈々氏、久世福食堂は吉田雄一朗氏が務める。
 軽井沢エリア3店舗で約4億円を見込んでいるが、久世福食堂の一人当たりの平均客単価は1,800円、月商2,000万円を見込み、人員は15名(営業時間11時〜9時)。久世福商店の商品構成は1,500アイテムあり、平均客単価は1,500円、スタッフは常時6名。また、サンクゼールの商品構成は1,000アイテムに絞り込んでおり、平均客単価は2,000円、スタッフは3名で運営している。久世福商店及びサンクゼールの夏の営業時間は10時〜9時となっている。
 「今回の軽井沢の投資額は約1億5,000万円。軽井沢エリアのみの売上げで4億円を見込んでおり、来年度は目標の60億円の大台に乗るでしょう」と話す(株)サンクゼール営業本部長の山田保和氏。久世福食堂はもう3回ぐらいのブラッシュアップが必要なるだろうという。初日からの3日間は、85万円、115万円、85万円で、その後のウイークデーは40万円強の売上げだったという。
 久世福食堂の定食は8品あり、ご飯も味噌汁も美味しい。主に全国うまいもの逸品小鉢料理1,500円、信州メンチカツ定食1,600円、旬魚を直送•季節の焼魚定食1,600円、信州サーロインステーキ定食3,500円が売れるという。お重もの(+600円で野菜食べ放題)は、気仙沼名物•味噌味ホルモン焼重1,200円など3品ある。
うまいもの逸品小鉢定食.JPGうまいもの逸品小鉢定食
 お食事物は上品な旨み久世福の「万能だし」茶漬け1,000円など4品、お子様メニューはカレーセット650円など2品、単品ものは久世福特製「万能だし」のだし巻き玉子300円、全国うまいもの逸品小鉢各種300円、松本名物鷄の山賊焼き800円、京都•金沢 古都生麩田楽食くらべ600円など16品がある。
 デザートでは軽井澤 天然かき氷など9品を揃え、ドリンクは久世福オリジナルエイジングコーヒー600円、愛媛•明浜産みかんジュース600円、信州産ふじりんごジュース500円など11品を揃えている。
 また、アルコールではビールはハートランド650円、軽井沢高原ビール(ワイルドフォレスト)700円、日本酒は「福松」純米吟醸1,800円、福松生原酒1,500円(各グラス600円)、焼酎は薩摩焼酎「福松」石蔵造り2,800円(グラス700円)、ワインはシードル2,100円、ナイアガラスパークリング1,800円、ナイアガラブラン1,600円、軽井沢シャルドネ3,600円、長野ルージュ3,600円(グラス500円〜750円)を揃えている。
テラス.JPGテラス席
 「飲食物販複合店『久世福食堂』『久世福商店』という和の大型飲食店と和グロサリー店をワンフロアに収めた店舗は、全国的に見ても珍しいと思います」とホッとした表情を見せる(株)サンクゼール社長の久世良三氏。今後も改善とブラッシュアップを進め、この業態の全国展開も検討しており、また米国での展開も夢見ているようだ。