2017.12.07(木)

小諸市で南高梅を生産する信州アグリトライアル
梅の花に似た小諸市章、市の「木」の梅花教育も
和歌山の「南高梅」を市内中心に約4町歩に植栽

 日本一の梅の里と言えば、和歌山県の田辺市や隣接のみなべ町。「南高梅」もその名が付けられて今年で50年になる。その地域からの協力で小諸市周辺にも「南高梅」が2005年頃から植えられ、農産物の水稲、りんご、モモ、プルーンに並ぶ一角を占めるようになってきた。
 ご承知のように「南高梅」の実は、大きくて肉厚で柔らかく、種は小さい。また、皮が薄くて香りが豊かである。このような要素が高いブランド力を維持し、全国にある100種類を超える実梅の中でもトップクラスの品質を維持しているのだろう。
 勿論、栽培にあたり産地の風土や生産者の弛まない努力もあっただろう。適度に雨が降り、水はけの良い土壌、南高梅の花が咲くとミツバチの力を借りて受粉させるという。自然と一緒に一粒一粒が丁寧に育てられ実が熟すと、フルーティな香りが辺り一面に漂う。毎年こうして高品質の実梅(みうめ)が実るようだ。
 肉厚で柔らかい完熟の「南高梅」は、梅干しの高級品として贈り物やギフトとして全国に販売される。この他に梅酒にも使われ、日本茶や紅茶にも相性が良く、食後のデザートにも合う。また、梅は健康にも良い「クエン酸」が多く含まれ、健康管理にも好適な食品となっている。

 さて、小諸市で「南高梅」等の栽培に励む人物がいる。NPO法人信州アグリトライアル理事長の吉澤俊彦氏(52)だ。この「南高梅」のご縁は軽井沢の「銀亭」(しろがねてい)の関係者との出逢いに始まる。当時は浅間山麓の畑地2反歩に50本の苗木を植えた。
 元々、和歌山県の産地では地球温暖化の影響で気温が高い海沿いの地域の収穫量が思わしくない状況で、その関係者の産地の北限を探る計画に協力したのが吉澤俊彦氏であった。試行錯誤の中で「南高梅」の栽培に、高冷地をはじめ標高の低い千曲川沿いで挑戦。勿論、和歌山県の農園で土作りから剪定、消毒等の実技指導も受けた。
 吉澤氏は遊休農地に栽培を広げようとくだんのNPO法人を設立し、現在では佐久市、東御市、上田市と栽培地を増やし、約4町歩に千本を植えている。NPO法人のメンバーは3名おり、生産者は8名に増えている。現在実っている農地は1町歩(一反歩40〜45本)あり、全体で4トン生産している。1本の梅の木で概ね30キロの収穫があるという。

 「南高梅」の栽培で、こちらも受粉はミツバチを使う。ミツバチの飛ぶ時期と受粉時期を如何にうまく組み合わせるかも気遣うところだ。植栽でも土の上に置いて土を被せるのがポイントで、そうすると根が伸びやすくなる。掘って埋めるとすり鉢状になり、地上に出て根がれしてしまう。この他にも剪定や消毒にも注意を払っている。特に黒星病(カビ菌)には要注意だ。3月の花が咲く前、実が付く頃、5月に1回、6月に1回消毒散布し、7月に収穫となる。

 

実梅は漬け梅、梅酒やピュレ、ジャム商品に
 
 現在、実梅が4トン生産されており、その内1トンは梅酒や甘酒用に販売され、残りは漬け梅や梅ピュレ、ジャム加工等に使われる。実梅の販売や加工品の販売は、吉澤俊彦氏が代表取締役を務める(株)ヴィジョン(本社小諸市御影新田、資本金1,000万円)が担っている。
 梅酒等の実梅は佐久方面の酒造会社4社に供給しており、ジャムやピュレも千曲市の食品加工会社で準備中だ。ミックスジャム(梅の他に人参、りんご、桃)、大人のジャム、1キロパックの梅ピュレ(業務用)などだ。この他にも気仙沼から「高級しらす梅」用や小樽からも引き合いが来ているという。
 小諸市の市章の「梅」をテーマに6次産業化を目指している吉澤俊彦氏は、小諸市の「梅花教育」の一環に協力し、11月20日に芦原中学校の生徒さん(約140人)と梅の苗木を50本植えた。地元の人やPTA役員らが見守る中、毎年実を付ける成木の間を縫うように若い苗木を植えた。「梅花教育」のシンボルとして学校周辺や梅林並木に現在約2百本あり、古くなった木を補充するために不定期で植樹している。これも50年近くなる伝統行事という。今回植えた苗木が順調に育つと、3年後には実を付ける。
 この50本の植栽について吉澤俊彦氏は丁寧に語ってくれた。「苗木1本につき、鶏糞5リットル、石灰2キロを植え込み、穴も施し混ぜ込み、2週間程馴染ませる。更に藁を細かく切って植え込み、土の上に苗木を盛るんです」。
 小諸市の玄関口から懐古園までの道路沿いで50年にわたり親しまれ、梅林並木も一層整備されて来た。さらにその周辺地域の農地に「南高梅」や他の品種を増やし、和歌山県に次ぐ産地になることを夢見ていると、吉澤俊彦氏は熱く語ってくれた。

吉澤俊彦氏(小諸市•アル フォルノにて